レポート‶人生100年時代” 知っておきたい「社会保障」

レポート知っておきたい「社会保障」

 

 このところ、新聞やテレビ、あるいはインターネットニュースなどで、「社会保障」という言葉が出てこない日はありません。

 しかし、「なんとなく難しくて、とっつきにくい」、「まだ自分には関係ない」と思っている人も多いかもしれません。また、将来に不安を感じていても、「誰かが何とかしてくれる」と「なんくるないさ」を決め込んでいないでしょうか。

 このところ、ホットな話題の「社会保障」について、一緒に考えてみませんか?

「社会保障」ってなに?

 社会保障とは、社会保障審議会において、「国民の生活の安定が損なわれた場合に、国民が健やかで安心できる生活を保障することを目的として、公的責任で生活を支える給付を行うもの」と定義されています。

 この定義は、社会保障制度の範囲や内容、対象者の変化等に応じ、時代の変化とともに変わっていきます。

 そして、社会保障制度とは、国民の生存権を確保することを目的とした国家の保障制度なのです。

 その社会保障制度のなかの中核的存在が社会保険であり、その種類には、「年金」や「医療保険」、「介護保険」、「労災保険」、「雇用保険」などがあります。

社会保障給付費とは

 先ごろ、国立社会保障・人口問題研究所は、年金や医療、介護などの社会保障給付費が2017年度に120兆2443億円となり、前年度比1.6%の増加となったと公表しました。

 介護給付費が伸びたことに加え、子育て支援策の充実で公費支出が増えたことが背景にあり、社会保障給付費は過去最高を更新し続け、日本の国家予算をはるかに超えています。

 その給付額を部門別にみると、「年金」が約55兆円、「医療」が約39兆円、「福祉その他」が約26兆円となっています。

 これはとりもなおさず、私たち一人ひとりの税金や社会保険料が多くの国民の生活を支えているといえるでしょう。

社会保障財源とは

 社会保障給付費のほかに管理費や施設整備費なども含めた、「社会保障財源」の2017年度の総額は141兆円5693億円で、前年度比3.7%増加しました。

 その内訳は、「社会保険料」が約71兆円(うち職員など被保険者拠出が37.4兆円、事業主拠出が33.4兆円)、税金など「公費負担」が約50兆円、「他の収入」が約21兆円(資産収入が約14兆円、積立金からの受け入れが約7兆円)でした。

年金積立金とは

 去る8月に厚生労働省は、厚生年金・国民年金の2018年度収支決算の概要を公表しました。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用収入等を含めた時価ベースの2018年度末の積立金残高は166兆4845億円となり、前年度から約2.4兆円増加しました。これに伴い、2001年度の市場運用開始以降の最高額を更新しました。

 この積立金残高は、年間の社会保障給付費の約1.4倍、年金給付額の約3倍にもなることから、「年金は、国が責任をもって運営しているから安心」といわれる所以です。

これからの社会保障

 「人生100年時代」に向けて、政府では社会保障改革の議論が始まっています。団塊の世代が後期高齢者となる2022年以降の社会保障の持続性を担保していくために、「給付と負担のあり方」の検討や、あらゆる年齢層を対象とした「全世代型社会保障」の構築などが重要なテーマとなります。

 今だからこそ、〝私たちの社会保障″に関心をもって、みんなで考えていきたいものです。

(一般財団法人沖縄県社会保険協会 常務理事 仲村 隆)